あいつのお気に入り
これであの男の人がこの場から退いてくれれば…。
そう思い、立って様子を見ようと顔を上げようとしたら…
「おい。」
低い声があたしの上から降りかかってきた。
…え?
恐る恐る顔を上げると間近にさっきの「れん」と呼ばれていた男の顔があった。
やっぱり、こんなところで女の人とあんな事してた人はかっこいいんだな…。
って!!
そんな事思ってる場合じゃなくて!
顔、近い!
思わず、後ずさるあたし。
「盗み見か?趣味悪りーな」
そう言って、あたしの顎を手で持ち上げる。
「ぬ、ぬぬ盗み見なんてしてません!…いやっ、しましたけどっこれは不可抗力というか、バッタリというかっ」
何とか弁解しようと必死になるあたし。