Do you know YOU!?
<3>

何を話していたのか分からない。

でも多分親たちにとってはどーでもいいこと。

父親が酷く怒り、あたしの足を蹴ったことだけはかろうじて覚えていた。

もう嫌だった、こんな生活に慣れてしまったことが。

相手の痛みが分からなくなってしまった生活が。

縛りつけようとする両親の居る生活が。

助けて、誰か、誰か、助けて。

頭の中にサイレンの音が聞こえてきた。

ダメだ、このままではいけない、赤いあのランプのサイレンの音が。

この耳に聞こえてきたのだった。

泣きじゃくる小さな子供と、でもどこか冷静で、現実味を帯びていなかった子供の二人が居た。

「じゃあ、死んでしまえばいいよ。自分を消してしまえばいいんだよ」

冷静な子供の口からそんな言葉が紡(つむ)がれた。

くすりと嗤(わら)う、赤い、赤に染まる冷静な子供の言葉に。

あたしは突き動かされていたのだった。

自分の机の中に入れていたカッターを取り出した。

泣いていたあたしも嗤いだす。くすくすと。

そう、自分が居なくなればいい。

腕を爪で引っかく行為だけでは、満足できなかった。

だから、これを使おう。

頭の中には「死にたい」の言葉で埋め尽くされていて。

次に気付いたときには、もう腕が真紅色に染まっていた。

カッターで切る、切る、切る。

深く深く、終わりなど無いかのように。

紅(くれない)色に染まったのは、自分の両腕。

痛みなど無かった、ただ夢中で、狂ってしまっていたのだろう。

自傷癖(じしょうへき)の序章だった。



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