Do you know YOU!?
<2>

そういえば、意識していなかったけど、バイト生や店長は、貴方のことを「ミスター」って呼んでいたっけ。

なんでだろうって少し気にはなっていたんだけど。

そんなに話すことも無かったから。

だからあたしは知らなかったのだ、貴方の本当の名前を。

ふんわりと香ってくる落ち着く雰囲気の貴方に恋してしまった。

今ではもう思い出としてしか認識が無いけど。

あたしは幸せだったよ、貴方にとっては遊びでもね。

「ええっと、なんで<ミスターU>なんですか?」

手が空いたときに思わずあたしは、自分から話しかけてしまった。

きょとんとする顔をした貴方。

でも直ぐににんまりという表現が出来そうな顔つきになって。

「それはね、内緒だよ」。

神秘的な優しげなオーラだった。

「まぁ、答えたくないことは省くけど、<U>だと英語で、YOUってなるでしょ?それが嫌であえて、<U>にしてるんだよ」

厨房から出てきた串焼きを、カウンターの貴方の席へと持っていくあたし。

「へー、じゃあ本名はユウさんなんですか?」

ふふふと怪しげな視線に気付いて、あたしの心が大きく高鳴った。

「ははは。違うよー。本当の名前は<海(うみ)>って言うんだよ」。

ごくりと焼酎水割りを呑みながら、そう言った。

それが本当なのか、嘘なのかどうか、あたしには判別できなかった。

ただ、あたしは空と海の境界線が好きだから、何となく親近感が湧いた。

少しずつ雑談するようになって、あたしは自分からとても気になっていたことを聞いてみたんだ。

「んーと、海さんは彼女って居るの?」。

すると、あっけらかーんとした感じで、一言「居ないよ」とにこりと微笑みかけた。


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