Do you know YOU!?
(4) 海との絶妙な距離
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そうやって、あたしは自分の考えていた後ろ暗い気持ちに蓋(ふた)をしてしまって・・・思い出したのは、貴方と離れた後だったよ。

あの頃のあたしはぼろぼろで傷だらけだった、心も身体も。

それをさらにえぐったのは、貴方の最後のメールだった。

それに至るまでは、まだまだ過去のあたしは、知る余地なぞ無かったのは当然だろう。

その時のことを思い出すこと、貴方を憎み続けることなど。

貴方の裏の顔は知りたくなかったのよ、現実だなんて思いたくなかったのよ。

刷り込みのように、貴方に恋することが必然のようだったから。

海さんとの初めてのデート(?)に浮かれすぎていたあたしは、いつもよりも饒舌(じょうぜつ)だったんだ。

注文した料理が運ばれてくるまで、色々なことを話した。

でも、内容なんて覚えてないくらい、他愛の無い話だった。

それをニコニコしながら、そしてたまに質問しながら、あたしの話を聞いてくれた。

料理が運ばれてくると、あたしたちはお互いに食べることに夢中で、会話は一旦とぎれてしまった。

途中でそれが気になってしまって、食べながらも、ちらちらと目の前の人物を見てしまった。

特に格好いいとかは思わないんだけど、やっぱり海さんの匂いはあたしを安心させていた。

だからかな、少ししか時間が経っていないのに、信頼できる人だったんだ。

心臓はやばいくらいの音に達していたけど。

海さんに聞かれませんように、なんて思いながら、視線は海さんのほうに集中していた。

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