Do you know YOU!?
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あたしは週三日、四日ほどアルバイトとして働いていた。

だから避けてしまった先輩に会うのは、とてもとても。

怖かったんだよ。

きっと嫌われてしまっているに違いない思考の末。

傷つくのが怖かった、そんな十代のあたしだった。

でも、でもね、絶対に今のあたしなら勇気を出して「ごめんなさい」と言えたと思う。

成長するにつれ、経験を積んでいくものだから。

大人になってやっと初めて分かることもあるんだ。

この世の中に綺麗で綺麗過ぎて、完璧に美しいと言われる人なんて。

居ないと思うの。

価値観が人それぞれあって、回答なんていっぱい返ってくるに決まっている。

裏を知らない小学生時代が、どこか懐かしく感じて。。。

汚れてしまった想いが、今もあるのだと。

兎に角(とにかく)、バイト先では先輩とあたしのことがよく話題に上がっていたみたいだ。

それをきっとあの人も知っていたのではないかと思うんだ。

一番端の自分の指定席で、薩摩焼酎(さつまじょうちゅう)を飲むのが、常だったから。

カウンター越しに色々とバイト生を見る視線が、ときたまあったのだ。

そして、手の空いたバイトの先輩たちが、話し合っているのを見かけていたのもある。

此処が自分の居場所なんだってくらい、独りだった。

あの人は、そう、きっと。

孤独に慣れすぎた可哀相な、寂しい眼をすることもあったんだ。

それに本人は気付いていなかったのだろうね。

不意に見せるそんな眼に惹きつけられて、よくチェックするようになる。

顔が良くて、身長も高くて、何でも出来る理想的なタイプではなく。

ごくごく普通のサラリーマン。

天然パーマのようなくしゃっとした髪、時折見せる笑顔、優しそうな雰囲気のオーラを纏(まと)っていた。

あたしより10年以上も多く生きている社会人。

年上過ぎるなんて言う人も居るのかもしれない。

でも、あたしは・・・あたしは・・・。

「好き」。

その一言を・・・言いたくて、言い出せなくて、苦しい恋に挑んでしまった。




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