愛してよダーリン




電話の向こうはざわついていて、まだスタジオにいるんだって分かった。




「樹?」


『あー…なんか、沙絢がお前に会わせたい人がいるって』


「え?」


『用事って何だよ?まだ済んでねぇの?済んだんだったら、杉山さんが迎えに行ってくれるらしいから』




結局、樹の流れに乗っちゃってスタジオに行くことになってしまった。




杉山さんはあと10分で来てくれるらしく、それまで少し家で待つことにした。




そういえば、さっき樹……沙絢ちゃんのこと“沙絢”って呼んでた。




あたしのことは滅多に名前で、“奈緒”って呼んでくれないくせに、知り合ったばっかの沙絢ちゃんはもう呼び捨てで呼んでる。




それが……悔しい。




あたしに何も言わずにモデルをすることを決めて、いつの間にか沙絢ちゃんと仲良くなってて、


ほんとに、樹の馬鹿。




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