愛してよダーリン




「ありがとう。撮影って言っても明日の1日だけだし、半分くらいは質問だからリラックスして出来ると思うわ」


「樹くんも……大丈夫?」


「ん?あぁ」




なんだよ。

樹ってば断る素振りすら見せないで。

ちょっとはためらえばいいのに。




1つ返事で撮影を了承した樹に、ムカついた。




あと6日間しか一緒にいれないのに。

6日経ったら樹はあたしの知らない場所へ行っちゃうのに。




……あたしたち、離ればなれになるんだよ?




だからあたしだけのそばにいてほしい――…なんて、ただの我が儘だって分かってる。




樹が了承したんだから、この滅多にないチャンスを無駄にしないで頑張ってほしいって思う。




けど、けど……。




「……る」


「え?」


「……帰る」




沙絢ちゃんはびっくりしてたみたいだけど、樹はどんな顔をしてたのか分からない。




だって、樹の顔だけは見れなかった。




近くにあった自分の荷物を手に取り、足早にスタジオを後にした。




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