愛してよダーリン




「樹知らないでしょ。奈緒がここ最近ずっと1人で泣いてんの」


「……」


「ただでさえ樹が引っ越すから不安なのに、沙絢と楽しそうに撮影してる樹見てどんな気持ちでいるか分かってんの?」


「……」


「スタッフたちに、自分の彼氏が他の女の子とお似合いだって言われてる奈緒の気持ち、あんた分かってんの?」


「……」


「いきなり何だって思うかもしれないけど。確かにモデルなんてなれないし、貴重な体験だったかもしれないけど」




奈緒はきっと自分の気持ちを樹に面と向かって言えないだろうから、あたしが代わりに言ってあげないと。




「今回の熱も考えすぎて出たんだよ」


「…あぁ」


「昔から意地張って我慢するのが奈緒だったの知ってるでしょ?」


「あぁ」


「ちゃんと沙絢とのこと、説明してよね」




あたしがそう言うと『分かったよ』と言って、樹はカラオケ屋から出ていった。




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