愛してよダーリン
「どうした?」
樹は電話に出ると、普段出さないような優しい声で電話をかけてきた相手にそう言った。
「…あぁ。は?またやってんの?」
電話の相手が何て言ってるか聞こえるわけがないから、
あたしは樹が何の話をしてるのかまったく分からない。
樹がやけに優しいから、どんな相手なのかどんな話なのかすごく気になるのに。
そして電話を切ったから、あたしは樹に思いきって聞こうと思った。
「今の電話、誰か…」
「用が出来たからちょっと行ってくる。家の中で待ってろ」
だけど見事に遮られた。
ていうか用事って?
さっき高校の新しい友達との約束断ってたのに…。
どういうことなの?
「どこ行くの?」
「すぐそこ。すぐ帰って来るから家で待ってろ」
どこに行くのかも誰に会いに行くのかも言ってくれずに、
樹は自転車に乗ってすぐにどこかへ行ってしまった。
あたしは仕方なく樹の家のピンポンを押すと、樹のお母さんが出てくれた。
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