愛してよダーリン
樹だって男だもん………どんなに貧相な体のあたしが隣でも、そういうことは考えるよね。
思わずため息が出た。
彼女失格かもしれない…………なんて思ってると、いきなり樹があたしを抱きしめた。
「悪い。急かしてるわけじゃねぇから」
「え……?」
「お前が大丈夫な時まで、いくらでも待つ」
「いいの……?」
「かなり遅かったらどうか分からねぇけど、でも奈緒が嫌がることは絶対しねぇから」
樹の腕の中は………すごく温かくて安心する。
「だから、あんま気にすんな」
「うん」
「じゃあ、行くな」
樹は離れて、あたしの体から樹の温もりが抜けていく。
あたしは樹の服の裾を引っ張り、呼び止めた。
「何だよ」
振り向く樹に、あたしは唇を尖らせてみせた。
「チューチュー」
「お前はネズミかよ」
「キスだよキス!」
「あぁ。激しいやつ?」
「ち、ちがっ…」
そう言って樹は意地悪く笑って、触れるだけのキスをあたしにすると、改札口を通っていった。
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