愛してよダーリン




夢じゃ………ない。



他人事のように聞いてた樹の言葉は、あたしだけに向けられてた言葉であって。



今まで心の奥に隠してきた何年分もの樹への気持ちが、溢れるかのように涙になった。




「え、泣いてんのか?」


「泣いて、ないっ」



好きで好きで好きで。

どうしようもなくて。



いつかこの気持ちを伝えようと思っていたけれど、でもその時には樹にはもう大切な人が傍にいるんじゃないかって思ってた。



だからこれから先も心の奥に隠していこうって、そうやって決めて勝手に1人で辛くなってた。



あたしには樹みたいに気持ちを伝える勇気はこれっぽっちもなかった。



別にこのままの関係でもいいなんて、強がってた。



気持ちを伝えてもないのに、フラれてもないのにフラれた気になってた。



勝負をする前に逃げた。

勝ち負けなんか関係ないのに、負けるのを怖がって勝負しなかった。



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