いばら姫




「……おまえだって
アズが好きなんじゃないのか?!」


『…好きとか嫌いとかって
くだらないよ

俺はアズが幸福になってくれれば
それでいいんだ

真木さんも
恋とは違う所で
アズの事、愛してる 』


「…アニキとか言ってたな 」


『…またそれとも違うと思う
"存在"自体を愛した事
貴方には、ないの? 』



―――― 存在



『…別に俺は
青山さんだから、
味方してるわけじゃ無い

過去の事
未来の事

―― その絵を描いた場合
今の時点では
青山さんが隣に居る風景で
一番、アズが微笑んでる

だけど
アズにも新しい出会いがある

人は生きていたって生まれ変わる

真木さんが、池上さんが
――もしかしたら貴方が

アズを幸福にする可能性が増えて行けば
俺は、その二人の味方になる


…貴方が此処で
青山さんとアズの出会いを邪魔しても
運命の輪に、影響は起こらない


俺達はきっとデビューするし
すぐにアズの居る高みに行く

あの二人は
『運命の輪』のカード
右と左で楽器を吹き鳴らす天使なんだ

…きっと最後の瞬間まで
音楽が二人を離さないよ』




「…意味が最後の方は
あんまりわからないけど
何だか誰にも勝ち目なんか
無い感じだな」



『…"恋人"のカードがある

アズを
普通の女の子に戻す力のある奴だけが
その正位置をめくれる

今の貴方じゃ
逆位置しか、開けない 』



「…正位置とか
逆位置とかって、何よ
何となく意味はわかるけど」


『…タロット占いのサイトで
調べてみれば、すぐわかるよ』


「…クイズ好きか 」



『…アズもクイズ好きだね』


"灰谷"は
表情を柔らかくして
そう呟き、笑った








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