いばら姫
それは
"歩いて帰る"と電話があった時
『話して欲しい』と俺が言い
少し困った声で話を逸らしたまま
流れてしまった、
…本当は話したく無かった筈の
詳しいアズの過去
――幼い頃の
俺の想像を遥かに越えた
悲惨な虐待
しかもそれは淡々と書かれていて
それが彼女の『日常』だったのだと
あらためて悟った
その中での
最初の新宿の街での
街の人との触れ合い
水谷さんという人との出会い
歌が歪めた関係
――― 放浪先
横濱の空の下での、
青山さんとの出会い
この出会い方は
泣き笑いしながら読んだ
横濱から再び新宿――
真木さん、池上さんとの出会い
そして
――― 野音での事件
目覚めた時
アズは怪我のショックで
事件前後の記憶が
すっぽり抜け落ち
青山さんの事も
―――当然 池上さんの事も
真木さんが命名した
"エクレシア"での日々も
全て忘れてしまっていた
有ったのはその直前の
共同生活をしていた水谷さんと
喧嘩をして家を飛び出した所迄
―――鏡の中に映る
カッパの様な自分
何年にも渡る闘病
そんな中に突然現れた
愉快な日本人"池上海平"
そして
慣れない豪邸で始まった、
多忙で留守がちの
父親との生活
たまたま覗いた
父親の仕事部屋で創られる
とても綺麗な『虚構の世界』
"少し気晴らしになるかもしれないよ"と
オンラインゲームを始めた事―――