いばら姫



俺は それに
『時間がある時でいい
声が聞きたい』
そう返信し


数日後の夜半
アズから電話がかかって来た


そこは室内らしく
後方では
楽器の音と
沢山の人の、騒ぐ声


「――… あの後
無事 帰れたのか 」


『―― うん 』




「…今、どこにいる? 」

『 スタジオだよ 

コンテストで撮った映像使った
プロモ
それの新曲を、皆でやってた』



「……いいな 」

『…え…? 』


「…俺は昔から
おまえは跡継ぎだって言われて育って
―そういうもんだと思って
育って来たからな

唯一、本気でやったのは
アイスホッケーだったけど

―― その時だけは
仲間と一緒にいる感じがあって
楽しかった 」


『―…淳だって
仲間いるじゃない

前言ってた、友達の 西くん…?』



「…西だけだな
ガキの頃から、
俺に距離置かなかったのは

ドラマなんかでも良くあるけど
ある一個の家が
田舎では一個の村を支えてるとか

ちょうど岡田
うちががそんな感じで――

周りに人は居たけど
取り巻きに近かったし
"仲間"とは、少し違ってた…


夢を話してても
『岡田はな〜
もう決まってるからな〜』とかね…」



『…淳は 』

「 うん 」


『何になりたかったの?』




「……小さい時は
お巡りさんになりたかったな
制服がかっこよかったし
白バイとかね 」


『…だから、ハーレー? 』

「……かな
意識してなかったけど
そうかもしれないな」

『…後は…? 』



「……やっぱり、アズと話してると
嬉しいな」

『きゅ 急に何を!!』



「……アズ」

『 ん? 』


「…会うと 酷い事ばっかり言って
本当にごめんな…」


『…いいよ…』




「―― 青山
青山さんに、会えたのか…?」


『…うん 』



「復活したのか 」

『…復活?』


「 また恋人同士に
………戻ったのかって事 」







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