いばら姫
自分で自分の台詞が
胸に痛くて
「…やっぱりやめようか
この手の話になると
せっかく楽しく話してるのに
また俺、場 崩すから……」
『…あのね 』
「………うん 」
『松田さんがね
あの人は、芸能界に入らないのかって
そう言ってたよ』
「…俺か? 」
『 うん 勿体ないって 』
「…演技出来ないから無理かな
………モデルやるには、
身長低すぎるし
最低でもあの人
真木さんだっけ
あの人位無いと、無理でしょ」
『私 淳はずっと
映画監督になりたいのかと
思ってた 』
「……誰にも言った事
無いけどな
その為の努力も、何もして来なかったし」
『…映画の話してる時
淳、全然声 変わるから…』
「アズにだけ
…あんなに映画の話したのも
俺があそこまで映画好きなんて
周りの奴ら誰も知らんし」
『………淳!!』
「…何よ 」
『映画の撮影って
見に行った事ある?!』
「あるわけないだろ
…近所の山に
ドラマ撮影で何か来てたのは
ちょっと見た事あるけどよ」
『…カイヘーがね
今、映画撮ってるんだよ』
「……そうなんだ 」
『それでね
内容は、学園物で
クリスマスのシーンがあって
公開は、来年の春なんだけど
百人位の制服着たエキストラで
イルミネーションの下
突っ走るのね』
「 うん 」
『それ 出ない?
学校のシーンも撮るから
朝からスタンバイしなきゃいけないけど
撮影してる現場
見られるから、面白いと思うの!』
「…アズも一緒か? 」
『うん! この話聞いた時から
楽しみだったの!!』
「…いつも撮られてるのに
やけに熱心だな
エキストラとかって、その他大勢だろ」
『…興味無い?』
「…いいよ
興味は、充分ある 」
――― そういう衆人監視の場所でなら
俺も冷静でいられそうだし
何よりアズが
自分から誘ってくれた
――友達としてだとしても