いばら姫






「アズ!何処だ?!」


『えと…
人がいっぱいいて
赤いバスがあって
その横に小さい青いバスがあって…』

「バスしかわかんねえって!
銀行が沢山あるぞ!」

『だってここ銀行通りだよー!』


げらげら笑いながら
お互い携帯電話で
位置を教え合いながら走る



どうもここは、
そういうエキストラとか
その待ち合わせのメッカらしく
手書きの看板を持った人間が

「ドリフトビールのエキストラの方!
こちらですー!」等
あちこちで声があがっている


低い排気音が唸る中
厚着をした男達の列なる隙間


白のニットキャップに
"Rhyth"のダークグリーンの
チェックのロングコート
ブーツ姿のアズを見付けた



「ア…… っと 」

名前を呼ぼうとして焦った
―― こんな所で呼んだら…


携帯を持ったまま
キョロキョロしているアズの
ポンポン付きのニットキャップ
顎紐が揺れて可愛い


走って行って
腕を掴んだ



「 淳 !! 」



――――― 満面の笑顔



「…目の色が違う カラコンか?」

「うん!黒にしてきた!」


ニットキャップの下の髪も黒

「これはカツラなんだけどね
アズは染めても
不自然な黒になるよって
言われたから」



今日、俺達は"高校生"になる


「…淳 叩いていい? 」

「な いきなり何だよ」


「…そのダウンジャケット
叩いたら音、ピュウって鳴りそう」

「鳴らねえって」



叩く隙を狙うアズの顎紐を
鼻の下で、結んで笑った



aditasの新作
ファー付きフードのダウン
実際、阿尾森の寒さは
こういうのが無いと、冬が越せない


「…でも東京の冬も結構寒いな
種類が違う寒さ

底冷えって言うのかな」


「阿尾森は 痛いって聞いたよ」

「痛いね 」


「…淳! あのバスだ!」


バスの左窓サイドに
『"教室 BAROQUE" 御一行様』





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