いばら姫
送迎バスの運転手は
やけに愛想よい人で
乗る人皆に『おはよう』の挨拶
俺達も挨拶をして
一番後ろの複数席の、一個手前
アズを窓際に押し込み
二人掛け席を選んで座った
「ふぉー お尻あったけー」
「コート貸せ 皺になる」
「う うん 」
アズからコートを受け取り
席横のフックに
俺はダウンを脱いで
アズの膝にかける
「 平気だよ 淳」
「 暑い 」
「…ありがとう」
「 ん。 」
脚を思い切り開いて
腕を組んで、
時計を見ているフリ
―……やっておいて照れた。
服貸す位で
中学生かよ俺は…
窓の縁に手を置いて
アズの瞳は、
スクランブル交差点を
ジッと見ている
――唇の先で、硝子が白く
曇って行った