いばら姫
空がすっかり明るくなって来た頃
広い 三つのアーチがある
川を渡った
「……ここ何川だ? 」
「あらかわ、だと思う」
「…もしかして"銀八先生"で
皆が土手滑ってる川か?」
「うんうん! 」
―― 俺達の話を聞いていたのか
横に座っていた奴が
ふいと目を開けて、川の景色を見出した
少し渋滞があり
このバス以外にも
別の地域からの
エキストラ隊のバスがある様で
お姉さんは携帯で連絡を取り合っている
一時間も走ると
別世界の様に田畑が拡がり
高層ビルの類は、影も形も無くなった
「確か、群摩の高校で撮影って
言ってたよな」
「うん 」
「…眠いなら寝ろ
着いたら起こしてやるから」
「淳もあんまり寝てないでしょう?」
「前言ったろ
俺は元々あんまり寝ないし
それに」
「 うん 」
「…いいから寝ろ 」
アズはコクリと頷き
窓際に頭を寄せて、瞳を閉じた
――― この距離感が
アズの線引きなんだろうな…
"真木"には体
預けてたくせに…
畑と電柱と
たまにポツリとある自動販売機
民家が見え始め
道路も少し、細くなる
忽然と立つコンビニを抜けると
右側に、
体育館らしき屋根が見えた
校門は開かれていて
組み立て式の長机が
昇降口の入口近くにあって
先に着いていたエキストラに
制服を渡している
俺達のバスも
そのワゴンや撮影車
バスの停まっている校庭の端に
停車した