いばら姫
…アズはかなり
音に敏感な様なのに
バスが止まり、乗客が降り始めても
寝に入った体制のままだった
起こすのは皆降りてからでも良い
焦る事も無い
人が降りてしまってからも
俺達が立たないからなのか
お姉さんが後方まで歩いて来た
アズを起こそうとすると
「あ、もう少し寝ていて平気ですよ
今、更衣室いっぱいですし」と
小声で話し掛けてくれた
「すみません」
「制服持って来ますので
少し待っていてくださいね
サイズは、
以前募集した時にお聞きした物で
平気ですか?」
「 はい 」
5分位して戻って来たお姉さんの手には
二つの大きな、茶紙の袋
マジックでキチンと
サイズが書かれていた
「もう少しで、更衣室
空くと思いますから
――昇降口に
矢印の紙と、案内の人間が
立っていますので」
「 ありがとう 」
お姉さんはニッコリ笑い
バスを降りて行った
再び携帯を取り出して
忙しそうに、動き出す
―――袋を開けてみた
「 学ランか 」
中学も高校もブレザーだったから
学ランは初だ
「…アズ 起きろ 着いたぞ」
「………ん…」
一瞬丸まった後
壁に頭をぶつけた
「うあ アホ 」
「…………」
頭を擦りながら、
ダウンジャケットに突っ伏す
「ヨダレ垂らすなよ」
「……もう垂らした 」
「…寝起きにぐずると犯すよ」
指でアズの背中に
スッと線を引く
アズは意味不明な言葉を叫んで
パッと飛び起きた
真っ赤なアズの顔
耳元で囁いて、畳み掛ける
「…ちょっと感じたろ 」
殴ろうとする手を避けて
バスの外まで、とっとと逃げた