いばら姫
昇降口の前
女子更衣室は二階のロッカー
男子は一階の理科室との掲示
『準備が出来た方から
上履きが置いてありますので
それに履き変えて、
体育館に向かって下さい』
拡声器での誘導
「アズ、着替えたら
ここで待ち合わせしよう
…何だよ
まだ怒ってるのか? 」
「…怒ってないもん 」
アズは「後でね」と
ブスッとした顔で、二階へと上がる
――理科室で着替えながら
怒りながらも
「後でね」と言った事が可愛くて
つい笑いが漏れ、慌てて真顔に戻す
Yシャツの袖のボタンを留め
上着を羽織った
財布と煙草をズボンのポケットに入れ
急いで昇降口に降りたが
まだアズの姿は無い
体育館への雨避け通路の端では
スタッフと思しき男達と
"偽高校生達"が談笑しながら
煙草を吸っていた
そして、ふと気付く。
――― 女子はセーラーだ
「 淳 」
後ろから名を呼ばれて振り向いた時
その悪い予感は、的中した。
白に黒のツーラインが入った襟
紺の薄手のセーター
プリーツスカートに、ニーハイ
アズは
「おかしくない?」と
拡げた両手の先を握り、
揃えた足元を見詰めながら
俺に心配そうに、聞いて来る
「…僕と付き合って下さい。」
「えええっ?!?!」
その光景を周りで見ていた
"偽高校生達"が、一斉に爆笑した