いばら姫





ザワザワとした
体育館に、足を踏み入れると


空中に


――― 黒光りする
モーション・
コントロール・カメラ



体育館のステージを右側
左側の後方にそれがあった


よく
メイキング映像なんかにある
クレーン式で
長いアームの先に
カメラが取り付けてあるあれだ



ステッピングモーターの
緩い稼働音がして
カメラとカメラマンが
地上に降りて来た

制御しているのは
その更に後方にあるPCらしく
声を掛け合い、撮影位置を
決めている



そしてパイプ椅子の並ぶ
真ん中の通路にはレールが敷いてあり
移動車式の、カメラがあった




……どれ位魅入っていたのか

「そろそろ席の方へ」

「…あ 」


スタッフの人に声をかけられて
我に帰る

座席の騒ぎの間に
何人かまた
ジャンパー姿のスタッフが立っていて
「こちらへ こちらへ」と
それぞれ座り位置を指示していた

――― 振り返ると
アズが俺の後ろで
微笑みながら、立っていた


「…座ってろよ 」

「……淳の顔が綺麗だったから
見とれてた 」

「な……」




アズがスタッフに声をかけて
指示を待つ

一瞬間が開いて、
「…お二人、こちらへ」


座りかけて、ギョッとした








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