いばら姫




『前回のあらすじ風』に
少し事情を説明すると ――


ひょんな事で、
自分とは縁の無い物だった筈の
【RELIEF FANTASY TOMORROW】と言う
RPGネットゲームをやり始めた俺は

 Az と言う女の子に、恋をした



メアドを、携帯番号を、かなり根気よく
半ば騙しで聞き出して

ひと夏の間、
リアルでは『メールと声』
ゲーム内では
『チャットと冒険』の交流を繰り返し


俺は彼女に
生まれて初めての"告白"をした



そして、―― 色々とあって…

俺はもう彼女には
永遠に会えないと思っていた



だけど、そのオフ会にアズが現れ

―― 思わずキスした俺に
アズは『待った』をかけた



…普通に考えたら初対面の男に、
いきなりそんな事をされたら
驚いて拒否しても当たり前

だけど自分の中では
『アズ』は、すっかりもう
"俺の女"になっていて――


…だいぶ感覚が
ゲーム脳になっていたんだろうと思う

…そもそも自分の恋愛が
ナンパで女と遊ぶ事しかしなかったし

本気で一途な、段階を踏んだ恋愛なんか
一切した事が無かったから…




――― しかもそこで驚愕の事実を聞き

そのショックで、せっかくこれから
賑やかなオフ会が始まってるってのに

空気も読まず
『仕事が出来た』と理由をつけて
すぐにこっちへ戻って来てしまった――



…アズは勿論、追い掛けて来なかった


『何で追い掛けて来ないんだよ!
お前は何も解ってねえ!』と
携帯で怒鳴り散らしてから

……自分の住所も何も
教えてない事に気が付いた


そもそも俺が間違ってるのは承知してる

だけど
訳の判らない怒りがずっと持続していて

『こっちに来れば岡田は有名だから
あっという間に、
俺の居場所なんかわかる』とか

…かなり自分本位の屁理屈を言いまくった







「 …淳 何した? 」


西の声がカチンコ代わりみたいに
俺の意識を、『リアル』に戻す





< 15 / 752 >

この作品をシェア

pagetop