いばら姫





――― 朝方

太陽の光で目が覚めた



ダブルベットに
俺とアズが二人、寝ていて
自分の首の下に
細くて白い、腕があった


「…アズに腕枕されてるし…」

軽くて暖かい羽毛布団が
体の上

少し体を起こし
枕元の時計を見て、仰天する



―― 8時間も眠ってたのか…?


…アズは
俺が寝入っても、暫く起きて
頭に濡れタオルを
充ててくれていたらしく

空調と体温ですっかり乾いた
ピンクのタオルを
細い指先に握っていた


――― 俺が起きたら
アズも起きちゃうかな…


再び少し体をずらして
元の位置に戻る

ゆっくりとした
思い切り耳を充てないと
あまり聞こえない、アズの心臓の音

無意識に
アズの手が俺を抱きしめた


「……あったかいな…」



「…おはよ…?」



「…おはよ…

なーんだよ
これから色々しようとしてたのに…」


そう言うと途端にアズは
まだ半分溶ける様になっていた
碧い瞳を見開いて
回転しながら上掛けを体に巻き付け
床に転がって逃げる


「うわっ!寒いだろ?!」


アズはそのまま
バタバタと寝室を出た


俺も勢いよく起き上がって
高層ビルの見える部屋へ
移動する



「アズさーん…
うわ!!
お前そのうどんさ…!
伸びて凄い事なってるんじゃ…!」

「おいひいよ? 」

「…しかもコーラと一緒に食ってるし…」


俺はテーブルで汗をかいたシャンパンを
ナフキンで押さえて
ポン。 と抜いた


グラスには
ナイフで削った、林檎のカケラ

そこに薄い金色の泡を注ぐ


「苺じゃないの? 」


「…やっぱり、俺だから
ここは林檎だろ?」


アズは納得して、にこにこ笑う

それを口に付けようとした時

――― 少し本気で 笑って言ってみた


「…毒林檎かもよ 」



一瞬だけこっちを見て
アズは一気にそれを飲み干し
林檎をかみ砕いた







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