いばら姫
―― 小さく唸り、胸を抑える
アズはグラスを置くと
パタリとソファに倒れ
動かなくなった
本当に喉に林檎を詰まらせたのかと
少し心配になって横に座ると
アズは薄く 瞳を開いた
何か気になったのか
俺のシャツの端を、少し裏返して
品質表示のナイロンタグを弄り始める
―― 強気な時と違って
弱っている時のこいつは
体中の線とか、視線とか、
無防備に誘っていて
…少し
かなり体に悪い
「…アズ 」
「 ん? 」
「……真木ってのは
いつもお前の傍にいるの? 」
「 えと…
普段は、女のマネージャーさんと
スタイリストさんと一緒で
クウヤが顔出すのは、ああいう時だけ
でも、時間ある時とか
皆と一緒に、ご飯食べに行ったりする」
タバコに火を着けた
「……なんかされた事ないの?」
「ケムリ出そうなデコピンなら
しょっちゅうされる… 」
思い出した様に
アズの顔が、苦み走った。
「…そういうんじゃなくて…
よく平気だなと思ってよ…」
「平気って? 」
「……アズはさ
もう少し自分が
女の子だって事、自覚しないと…
…だから
そーいう風に
平気で目の前で着替え出すのは
やめなさいって!」