いばら姫
「…終わった 」
充電もかなりヤバくなっていて
慌てて『保存』ボタンを押した
「 淳 」
「……何 」
携帯をいじりながら
振りむいた向こうに、
自分の携帯を俺に差し出すアズ
「 今、淳をカメラで撮った 」
「…何このカッコイイ人」
「うん カッコイイ。」
「…オイ。とか突っ込む所だろ」
「だってこの顔、ホントにカッコイイよ
――…機材見てた時も
こんな顔してたから、慌てて今撮った」
… 多分、今さっき
『……何 』と振り向いた時の顔
基本、俺を嫌ってる奴らには
"やに下がってる"と言われる顔
AKARIさんには『黒王子』と呼ばれた
子供の頃の写真は
七五三やら位しかあまりないし
どれを見ても、無表情
高校に入ってからは
皆で撮るからかなり増えて
でもどれも無表情に近いか
どこか、口の端だけ笑ってて
多分これが
"やに下がってる"と
言われる要因
女と撮った写真も
何だか全部、そんな顔で――
いつの間にかついた
癖みたいな物なんだろうけど
――― だけど
アズと撮った、プリクラは
マジで楽しそうに笑ってて
『こんな顔するんだ 』と思ったし
この顔も
『………これ、誰だよ 』って感じだ
笑っちゃいないし
でも無表情とは違って
少し伸びて来た前髪越しに
強い目が、こっちを向いてる
手には、携帯
―― 俺はアズに携帯を返しながら
片手で胸に、抱き寄せた
「…何よ おまえ
この顔で迫ったら、効果あるわけ?」
「うんうん 」
アズはクスクス笑うけど
「…でもね 」と続けた
「…この顔をし始めたら
もう私の傍からは、居なくなる
淳も本当は
『そういう種類』の人だから」
「……また羽根とか言ってんなよ?
こだわり過ぎ。」
「…でも本当に、そうなんだよ…」