いばら姫





タクシーを降りて

有名な予備校や
どこでも見かける
チェーン店のカレー屋の
黄色い看板の光の下を抜けて

診療所のあるビルに入った




小さな受付の
待ち合い室の奥

あかりの洩れる、その扉の前に
灰谷は立ち止まって
中に入る事をしない



その横に立ち
―――俺はすぐに、納得した




枕元に居るのは梅川医師

青山は
白いTシャツの
広い背をこちらに向けて丸椅子に座り

上半身と、長い腕を
ベットに上に投げ出していて
一瞬、倒れているのかと思った



――― アズは

その腕を枕に
体を預け切って、眠っている









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