いばら姫
―― アズが恵まれない環境の中で
早くに家を出た事は
以前に少し聞いた話の内容で
窺い知る事は出来た
親の虐待
――放置
そんな似た環境の仲間が集まる
都会のたまり場での喧騒
『結構、皆賑やかで楽しかったよ』
笑いながら話す彼女の話を
また俺も、笑いながら聞いていた
俺のいる世界では
聞いた事も、現実感も無い
ドラマみたいな話――
「……私、家を出て共同生活をしてた
その時の人が、前に話した
今は外国でお父さんの紹介で働いてて
今でも手紙をくれる人
…お父さんとその人は
病院で、知り合ったの
――私、刺された事があって
その時に 」
「………… は ? 」
「…その人の部屋を出てから
仲間が出来て…バンドを組んで
野外コンサートに出た時に…
私―――
彼を守りたかった
だから
何も考えずに、前に出たの」
「…―― 彼氏じゃないって
言ってなかったか」
「……別の人だよ」
「…何よ それ 」
「……共同生活をしてた人"水谷"は、
私と似た感じで育って
ずっと独り暮ししてるって言った…
"俺、バンドやってて
歌唄いながら、ギター弾いてる
行く所ないなら、飯作ってくれれば
俺の家に居てもいいよ"
そう言ってくれて、
一緒に生活する様になったの…」
「…完全なナンパじゃねえか」
その言葉に
アズは首を横に振る
「…そういう風に手を出して来るとか
一回も無かった
水谷は、夜働いてたし、朝に帰って来て
少し一日の話とかして
私が作ったご飯食べて――
私は入れ代わりで学校行ってたから…」
「…仮にそれを信じるとしても
じゃあお前が言ってた
『歴代の一人』って、誰よ……」
「……水谷の所から、出た後
一緒にバンドを組んでた
ベーシストの、人」