いばら姫





―――― 携帯のカメラに映る
銀のロケット


シャッター音と共に保存されたのは

その足元で 月を指差し
腰に手をあてる、
男女の宇宙飛行士のセピア色の写真


日付は、12/25



「アズ、
次は窓の所に行って
超真剣に、窓の外、見て
灰谷はその横で、計器弄ってる感じで」


『…OK 』


―――次は、 銀の体に接近し
画面右の三割に入る様にして
砂場の上にしゃがむ


「…"月に着いた!"って感じで
二人とも弾けてみて」



灰谷はアズを抱き上げ
アズは両手をあげて、ガッツポーズ


「適当にシャッター切るから
二人で公園の中、走り廻って」


「……うん !!」



――― 映していて
やっぱりこの二人は
映され馴れているのか

それとも
元々が、そういう奴らなのか


ビックリして、
大きく拡げた口元を手で覆い
片手が指差す先には

スプリングがついた、ピンクのウサギ

ロデオの真似をして
灰谷が乗った



コンクリートで出来た山の上で
灰谷は
ファイアーマンコートの下に着ていた
スカルのシャツを脱いで、棒に結ぶ




―――― そこは 月

空気は無い筈なのに
旗が風に、翻った









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