いばら姫
「同じ機材、同じフィルム
それを使っていて
全然違う作品が出来るのは
やっぱり映す人の腕?とか
キモチとか…
…これ見てるとね
淳に録られてるアズさんの
ちょっと照れてる感じとか
撮ってる時の淳の……
すっごい切ない…
でもあったかい気持ちが
こっちにまで伝わって来るの
――前の奴とは、全然違う… 」
「…どう、違う ? 」
髪を掻き、少し俯いて
笑いながら聞いて見る
「…… 冷たかった 」
「…冷たい ? 」
「…あれ撮ってる時
結構楽しく、三人で騒ぎながら
やってたよね
だから…
でも 出来上がったの見た時
――― 感情が無い感じだった
…カナちゃんあれ見て
東京帰る事に決めたんだよ…」
「…え…どういう事だ…?
大学始まったら
帰る事は決まってたろうが…」
「好きになっちゃってたんだよ
カナちゃんの方はさ…」
ミチルは伏し目がちに笑って
『どうせ二、三日
ちゃんとご飯食べてないでしょ』と
雑煮を碗に盛ってくれた
「…全然…気が付かなかった…」
「基本、淳は
自分が興味無いと関心ないしねー
やっぱりさぁ、
"お前の映画撮りたい"なんて
普通の女の子が言われたら
期待しちゃうじゃない
私も、"お?"と思ったし…
――― でも、
映画撮るって、
カナちゃん連れて来て、声聞いた時
すぐわかっちゃった 」
「…考えてみたら
酷い事してたのか俺……」
「ジャカジャカジャーン
"淳は、Level が1上がった!" 」
「……でもまだLevel2だろ…」
「恋愛のレベルは
そうそう早くあがんないわよー
…似た様な人と、
似たような付き合い方して
また泣いたりするしさ… 」
「何よ お前、
前言ってた客と別れたのか?!」
「は〜い
やめとけって皆に言われたのに
夢中になって聞〜てませんでした〜
…反省してます… 」
「でも好きだったんだろ?」
「……うん 」