いばら姫




自分の巻いていたマフラーを解き
アズの首元へと
黒い手袋が交差する


―― ポケットを指差しながら
何かをアズに問う様に、口が動いて
それに彼女も、コクリと頷いた


" 渡したのか "


多分、そう聞いていたんだと思う



左手でコートを拡げ
その中にアズを入れる

タクシーが前に進んで来て
後部座席が開いた


次にコートが閉じた時には
そこにアズの姿は無くて


黒いスーツと靴が
ゆっくりその中へ動いて扉が閉まると
タクシーはそのまま走り出した


窓硝子の向こうの横顔は




――――― " 真木空哉 "――――






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