いばら姫
今回
灰谷は新幹線に乗った時
小学校の修学旅行以来、
久しぶりに冷凍ミカンを買ったらしい
そして" 冷凍ミカンは、
どんなシチュエーションで食べるのが
一番美味いのか "
… "青山は一口で、
ミカンを丸呑みに出来る"とか
メンバーに代わって綴られる言葉は
次々とファンの書き込みを増やして行く
田舎に行った時の想い出や
ミカンを使った料理の、詳しいレシピまで
「―― 岡田君?」
ぼーっと画面に見入っていた俺に
一日ここに居た吉田さんが、
静かに声をかけて来た
朝から来客が引っ切り無しに来ていて
四時を過ぎての昼飯を、
もそもそと口に運んでいる
「あ、そうだ 吉田さん
あの、さっきプリントアウトした
モニターで作った色、だいぶ違ってて
――― 随分、肉の量多いですね
その豚丼 」
「ああ、
何か"通常の三倍フェア"らしい
…それ、RGBと、プリンターのCMYK
色表現、違いあるから…」
吉田さんはヨロヨロと椅子から離れて、
俺の後ろに立った
「――… 岡田君 」
「 はい 初心者ですみません」
「…… いや そうじゃなく」
「――― え 」
「…何でもない
これもう要らないから、やる
そして少し、寝る 」
「 …はい 」
―――… 何カロリーあるんだこれ
吉田さんが映像室に篭ったのを見計らって
再びサイトを
「 …あれ? 」