いばら姫
・荊の冠
『 岡田君
あずの歌う所、聴きに行こう 』
――― それは八月に入ってかかって来た
"Sero" こと新原からの
オフ会以来、初めての電話
『海』と言う居酒屋で
携帯番号は、交換していた
「…もしかして 東京の、
ライブハウスで やるとか言う奴か?」
『 知ってたんだ
―――面白い企画でね
『Azurite』出るらしいってウワサは
即、流れちゃったらしいんだけど
それは予測のうちで
だから、
出演者にも、観客にも内緒で
スタッフとして
最後まで居るんだって
招待券くれるって言ってたんだけど
面白そうだし、どうせなら
スタッフやらせてよって言ったら
身元がハッキリし過ぎもハッキリしてるし
"いいよー
一緒にやろう"って話になってさ
…遠距離だから
たった数時間の為に、東京来るってのは
大変かもしれないけど
オフ会から、なんか妙な具合みたいだし
仲直りのきっかけに
どうかなって思ったんだ』
「 …何その心の広さ 」
『 騎士ですよ?僕は 』
「うは 」
『 ホテルとか取る?
取るなら俺が、手配しとくよ 』
「 …行くの決定か? 俺 」
『 え 来ないの?
この間はオフ会だったし
…色々あったから
フェアに徹して何もしなかったけど
来ないなら"棄権"と見做して
俺、リアルで行動起こすよ?
いいの?』
「……アズは
――――… いるだろ」
『 それは俺が
あずを好きな事とは全く関係無いし
俺は俺のやりたいようにするよ 』
「 ……やっぱり"Sero"だな 」
『 あははは
…それとね
あの居酒屋で話してた時と
状況が変わって来たんだ 』
「………―状況? 」
『 …あの人達は、バラバラになんか
なって居なかったんだよ
皆、"約束"を目指して
真っ直ぐ、歩いて来てる… 』
「 ――どういう事だ……? 」