いばら姫








――― 初めて見たのは
ただ画面の中を通り過ぎて行く彼女


出会って初めて会話をしたのは
小雨の降る、薄暗い湿地

あいつは魔法遣いでも無いのに
人を助けようと必死で


Levelは俺の方が遥かに高くて

…何処か他の奴を見下げていたのを
一瞬にして見抜かれた



リアルでもオンラインの世界でも
皆俺に、頭を下げる毎日


…俺はとても公平で、
紳士な男ぶっていたから
そんな事を言うあいつに腹が立って
必死になって、虚勢を張った



――― 何処かで確実に
あいつを負かしたい気持ちが
あったんだと思う

だけどゲームの世界では敵わないから

…リアルでの自分の"得意技"を
そこに持ち込んだ気がする



結局、俺の
"井の中の蛙攻撃"が効く訳なんか無くて
今思えば顔の赤くなる事ばかりだ




――― それでもお前は笑ってくれて

同じ目線で、俺を見てくれたから



「―――…… 俺が知ってるアズは

こんな消え方する奴じゃないです

友達が大好きで
変な言い方だけど、義理堅くて…
アホみたいに頑張るし
あいつが人に助けてって言ってるの
聞いた事ないし

…逃げろって言っても、
逃げない奴だから 」





吉田さんが再度
俺の目の前に、自分の携帯を勧める







< 471 / 752 >

この作品をシェア

pagetop