いばら姫





俺が携帯のボタンを押した時

「…ちょい待った 」

そう言って吉田さんが
携帯を手から引き抜いた



「…俺が本人か確認する 」


「―― あ 」



雨 そして真夜中

静かな空間で、
明るく大きなジョンの声が応対する

吉田さんは突然

「 …俺の初恋の女の子の名前は何だ?!
………正解!!」

「…初めてノートに書いた、
お前にしか見せてない
恥ずかし〜い恋愛物語の
主人公の兄の名前は?!」と
"吉田ミリオネラ"を開始する


十問位出題して、全部正解した後、
俺に「…よし!!岡田に代わる!」と
携帯を渡して来た


俺は笑いながら携帯を受け取り

ジョンは
『ドウしたの?!スパイゴッコ?!』と
やはり笑っている


けれど吉田さんが横から


「…"眠り姫"を助けたいんだ
岡田をそっちに行かせるから」


そう言った途端に
ジョンの陽気な声が止まる

――― でもそれは一瞬で


『 OK Boss 指示を待つヨ 』


スパイ映画の俳優みたいな声色で
ジョンは大きな雄叫びを上げた






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