いばら姫
「…え 淳!! どこか行くの?! 」
―― 一斉に席を立った男連中
その真ん中でミチルが
俺の服を両手で掴む
「…もしかしたらタカオさんも
向こうで困ってるかもしれない」
「―― 私は?! 」
ミチルは何か壊れた様に、大声をあげた
「こ…これ…
私宛てかもしれないんだよ?!
―― そ そりゃ
自業自得って自分でも言ったよ
でも私悪くないよ!?
…あいつがホストになって…
営業の電話…
他の女の子にするのが辛くて
――飲んでる時に、
飲み仲間に言われたのよ
『一本だけで結構金になるし
それで終了』
それで話引き受けたんだもの!!」
「―― 生きてらっしゃって良かった 」
そう言って、ハシバが柔らかく笑う
「… 俺の妹は、それで死にましたから 」
「………え?」
ミチルは不思議そうにハシバを見詰め
―― ハシバは
ミチルの向こうの何かを見ている様に
ゆっくりと話し出した
「…ウチは道場をやってる厳格な家で
妹は反発と東京に憧れて、家出しました
―― 何年か経って、結婚すると手紙が来て
俺と母親だけ会いに行って…
―――紹介されたのは
真面目で優しそうな彼でした
俺と母親は安心して
また連絡して来いよと、
二人に手を振りました ――― 」