いばら姫
――― 暫く泣き腫らして
"学校に行く"と眠ったミチルと
居間で蜂蜜レモンのお代わりを貰って
DVDを見始めたハシバを残し、
吉田さんと一瞬に、俺の部屋へと走る
明け方の空にまだ光は無く
都会の早朝
夜に浮き上がる汚れを吸った冷たい空気が
一瞬、喉の奥を詰まらせる
上着の一番上まで、ファスナーをあげた
ポケットの財布から鍵を引き抜き
こじ開ける様にドアを開く
「…岡田!お前、
パスポートは持ってるよな?!」
「はい!」
「ビザの申請…どうしようか
ジョンを雇用主にして
就労ビザでもいいが
このご時世、出るまで時間がかかるし、
観光ビザのが足が付きにくいか?」
「…… そうか… ビザ 」
明かりをつけ、
タンスから出したバックを床に置く
――― 荷物をこしらえた所で
すぐに行ける訳じゃなかった…
「 ……うわああああっ!!? 」
「 吉田さん?!? 」
吉田さんが腰を抜かしたまま
押し入れを指差している
俺は唾を飲み込み、かなりの覚悟で
そちらを振り返った