いばら姫






『…チケットは今日の一番最初の飛行機』


「でも…よくこんなに早く…」



『…言ったろ 助けるって
俺の今の父親は政治家
――こんな許可、いくらでも出せる 』


「お前は?!大丈夫なのか?!」


『…少し準備があるから後から行く

―――― 早く車へ 』






アパートから左に出ると
すぐに黒塗りの車

灰谷は先に助手席に乗り込み
『…鳴田空港に行って』と呟いて
ハンドルを握る白い手袋の主が
無機質に"はい"と、それに答える

俺と吉田さんも、
やたら静かに開くドアを開け駆け込んだ



吉田さんはすぐに携帯を頬にあて
英語を交えながら会話を始める



「岡田!
向こうでジョンと合流しろ
…もしすぐに会えなくても、
地下鉄には乗るな

―― 周りの人間全てが
"スミス"だったら終わりだ」






――― 黄土色に、明るくなり始めた空

湾曲する、
少し未来世界みたいな灰色の道路の下は
何処かへ行く
沢山の船が浮かんだ、波の無い海

動いているのは
中央線の白いラインだけ

鳥が飛ぶのを見て、少しホッとして
大きく息を吐いた ――









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