いばら姫



「ここで降りよう
この先に駐車場無いから」

「…さすが、東京 」



中華料理屋や
飲食店の並ぶ、バスのロータリー
色々な空気が混じっていて
少し咳込んだ


時間は、七時過ぎ

「今日はライブハウスは
早じまいして
八時から明日のスタッフが集まって
シュミレーションするらしい

俺達はスタッフとは言っても
フリして見学だから
出なくても良いんだけどね」


「…じゃあ アズ 来るのか」


「今日は来ないよ
出演者の人達も、明日」

「…そうか 」



―― がっかりもしたけど
少しホッともした



「岡田が来るって事は
あずには言ってないけど…
言った方がいい? 」

「 いや 」


その次の言葉が 出てこない


「…岡田に任せるよ
とにかく行こう 」






巨大な有名デパートが
道を挟んで列んでいる

その歩道を進んでいると
帰宅組らしい、サラリーマンの波


横断歩道があった



青になったので油断していたら
すごい早さで点滅しだした

「…こんなの横断歩道じゃないな」


「 え?! 」


「…こっちの事 」





――― 新原が言うとおり
そのデパート群を過ぎると
何にもなくて

工事をしている反対車線の音と
それを照らす、オレンジの光と
街灯の明かり

引っ切り無しな、車の走行音


事務所風の看板やら

そして何でと思う様な場所に
神社

燈籠だけが、照らされてる



少し行くと
+のロゴ、赤と白の看板
――消毒液の匂いがする



「こっち 」と
新原が、その脇道を指差し
スッと、入って行った












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