いばら姫
「…おまえ…!やっぱり何か変な薬でも」
唖然とする俺の質問を放置して
真木は人差し指を口に充て
俺を少し睨み付けながら
嬉々としてチューニングを合わせる
――― ノイズと一緒に流れて来たのは
ハイテンションに語るDJの
マンハッタンの渋滞情報
そして
今週のMusic Hit Chart
足早な曲名の紹介が200位から始まり
合間には、
リスナーからの言葉を読むコーナーと
今流行っている曲が流される、
定番の形式だ
真木は聞こえが悪くなると
アンテナの位置を再び変え
ランキング100位を過ぎた頃
すぐに告げられた
「〜『 Raila Gara 』 "FRIENDS'」
――― その名前が紹介されると
「 ……やった… 」
真木は
ラジオを壊れんばかりに両手で掴み
肩に拡がる茶色の髪を
震わせながら、鳴咽した