いばら姫
「空港から出た後
すぐに出迎えの人間が居るだろう
――― その中に
あの"被り物"をした人間が居たんだ 」
青山が表情を変える
真木が指射す先には、
黒い揉み上げをクルリと巻いて、
七三分けの
頬を染め、赤い唇をした
東洋人の子供と言った感じの
張りぼての被り物が、明るく笑っていた
「―― 何で
被り物の人間が居たからって… 」
「 アズルはあの被り物をした奴に
野音で刺されたんだよ 」
……… 情景を想像し ゾッとする
「 アズル本人は
すぐに別人だって分かったらしいんだけど
… 俺が驚いて、
近くに居た黒スーツに少し説明して
空いてた車にアズルを乗せて、
その場を離れたんだ
…よく知られてる黒スーツのSPってのは
正確には政府の要人を警護する警察機関だ
同じ様な服を着ていても
民間で雇っているのはボディーガード
俺の所もそうだしな
どうも
Global側の下請会社が雇ったその人
英語、あまり判らなかったらしくてさ
―― 掠った云々の大騒ぎになってるのは
寝込んでて全く知らなかった…
向こうに見張りが付いてたのは
俺を捜してたせいなんだ
さっきハシバに電話で聞いたよ
――― 本当にゴメン!!」
青山が問う
「―… 縛られてたのは…」
「 …あれは全くの別件
昨日
病院でやたら待たされて
ついでにGlobalに連絡入れようと
公園で飯食ってたら」
真木は
頭を殴られ、縛られ運ばれた真似をする
「 さっきの岡田の質問だけど
…今回こっちに来たのは
アイツの婆ちゃんが
寂しがってるからもあった
俺が向かったのは婆ちゃん家
だから
アズルも、まだそこに居る 」