いばら姫
「おい…
確かに本ツアーは年末からだけど
オマエ、取材とか異様にあったろ?!
それに灰谷も……
まさか、おかしな事してねえよな?! 」
青山は、困った様に笑って
尻のポケットから出した煙草を一本抜き
箱をテーブルに放った
「…自由に動ける様にとか言って
足場から飛び降りたよ 」
「――――― 馬鹿かアイツは!! 」
「…少し頭を切って
後は、足の捻挫
こっちには来てるけど、
今はジョンさんの紹介で
病院に入ってるから平気だ
ネットでも随分、
Global社が『Azurite』を、
利益の為に本社に売ったとか
事務所内から漏れた話を誇張した
嫌な噂が広まってたらしいし」
「―…んなの、
利益が上がる部分を
狭い場所に置いておく会社が
何処にあるんだよ
アズルの、
"広い所に行って
色々な景色を見てみる"って
意見と合致して
こっちでの話が決まったんだからよ…」
「――灰谷にとって あずるは
"卵から出て、初めて見た親"
みたいな物だから…
確かに、
そのあずるの周りに居る俺達も
自由に動かしてやりたい
その気持ちも強かったんだろうが
―― 灰谷自身、あずると離れて
淋しかったんだと思う 」
「 ……クソガキ… 」
真木はテーブルの上から煙草の箱を奪い
コートのポケットから
金色の細い、電子ライターを出した
桜貝が一枚、一緒に飛び出す
青山が
「…お前が持ってたのか 」と
笑いながらそれを指に取り
真木は
「 最初はスーツケースに入ってたんだけど
充電器無いか
荷物拡げた後に入らなくなって
無理矢理入れたら
この貝薄いから、潰れるしさ
―― なんか暇な時間にこれ使って、
オルゴール作るとか計画立ててたから
俺がポケットに入れてそのまんま…
―――― なんで? 」
「…これが
あのプレハブ小屋の前に落ちてたって
教えてくれた子が居て
それで真木を見付けたんだ 」