いばら姫
「―― 俺のお陰だな 」
そう言うと真木は逆に
「 馬鹿野郎
これをオマエにやったのはオレ
廻り巡ってオレのお陰 」と返して来た
ジョンも青山から煙草を貰って
そんな状況を笑いながら見ている
「…けど あずるが
そんなに荷物持って行くって珍しいな 」
真木は椅子に反っくり返り
片眉をあげて煙を吐き出す
「 クマだよクマ!
…青山オマエ
こっち来る前、皆で会った時
水族館と動物園一緒になってる所
あそこでデッカイぬいぐるみ、
買ってやったろう
―― 置いてけって言ったのに
絶対持って行くって泣きやがってよ 」
" 泣かすなよ "
青山は、そう笑って言った直後
真木を見て、苦しそうに呟いた
「 ――… もう限界だ
… あずるの 声が 聞きたい 」
―― 真木は判っていた様に
自らの両手を握り絞めるその顔を
真っ直ぐ見つめ
そして視線を外し
次には、俺の方を向いた
「―― 二人して、同じ顔で見んなよ 」
真木は一瞬
壁に掛けてある、柱時計で時間を確認し
片腕を椅子の背に
脚を組んだまま、携帯を取り出す
まだかなり暗いが
朝の七時
「 ボウズ、起きてたか? 」
そう言った途端に
真木が携帯を離して、耳を弄る
離れていても判る大声で
電話口に向かって何か怒っている雰囲気
「―― だからよー
そっち森の中だし
病院行ったついでに、
充電器買って来るっつったろ?
型番までしっかり書いてちゃんと…
だから!
…一日連絡しなかったのはゴメンって
ちょっと知り合いに会って
飲んだら潰れたんだよ…
てか驚くぞ
それな 青山と岡田
――― だから、青山と岡田だって
…… 何で…って そりゃ…
う〜ん …何でか、俺もわかんねえ 」
青山は吹き出し
俺も同時に、
声をあげて笑ってしまった