いばら姫






――― 電話はブツリと切れ

今ならまだ間に合う ――

そう思って駆け出そうとした俺を
青山が腕を引いて止めた



「 ―― 着替えろ 岡田 」


「 は?!
お前何言って… 今追えば
まだ間に合うかもしれないだろ?! 」



「…… 自分の体見てみろ 」






――― ダウンを脱いだ、下のシャツは

どちらかと言うと、まだ寒い部屋の中

何処かをさ迷い
湖にでも溺れて、
底から上がって来たみたいに

ぐっしょりと
わけの判らない汗で、濡れていた












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