いばら姫
「…んだよ 夜中にうるせえなあ
起きちまっただろうがよ」
「ごっ ごめんなさい!!」
「 …俺にもお茶入れとけ 」
部屋から出て来た真木は
そう言って笑って
洗面所の方へと向かう
ジョン以外
灰谷と青山は、次々と起き出して
テーブルの前に着いた
アズは早速
色々な物は無視して入れて来た
最近ハマッているらしい煎餅を拡げ
言う通り、
ちゃんとカーディガンも着て来た
東京に出て来て気付いたんだけど
どうも俺は、味の好みが濃いらしい
灰谷や青山は
かなり気に入ったらしく
何処で買ったか聞いている
…青山はきっと
灰谷にあの事は話していない筈
明日の昼には
あんなに大切にしているベースを
渡しに行くなど
想像もつかないポーカーフェイスで笑ってる
――― 明日は早く起きて
青山と一緒に出て行こうと思う
水谷が、
どんな準備をして来るのか判らないけど
まず第一に、
俺自身が水谷をぶん殴りたかった
… あの子をこっちに渡させてから
上手く行けば
ベースも渡さずに済むかもしれない
それから、全ての事を周りに話して
タカオさん ………水谷を
ギターの座から引きずり降ろせば
話は早いと思う
「…… 淳 ? 」
――― 思い切り
何か考えているのが顔に出ていた様で
アズは自分の眉間を、
人差し指で突いている
青山は一瞬俺を見て
瞼を伏せ、お茶に口をつけた
「 …ちょっとまた 眠くなって来た 」
「ジョンさんが明日の夜
ライヴハウス
案内してくれるって言うからさ 」
真木がそう言いながら
テーブルの上の雑誌を開き
一斉に皆、『 おお 』と歓声を挙げた