いばら姫




暖房を切り
車はゆっくりと構内を廻る


「 … 今回は繋がった
灰谷 何か聞こえるか? 」


真木の質問には答えず
全開にした窓から頭を外に出し
首を横に振った



「…灰谷
…ユカちゃんの携帯、
鳴らしてみてくれるか 」




―― そして灰谷も携帯を持ち

その手の中から
微かな呼び出し音が聞こえ ―――




目の端で 何か光った





「  真木!! 」



真木は入口近く迄フルバックし

その規則的に点滅する赤い光を目印に
壁上部に貼られた、
注意書きのプレート前で急停車する


光が何処から出ているのか――
その発信元を目で追う

紺色の、あまり新しくは無い車体

―― 後部座席は外され
剥き出しになったボルト
隙間を埋めんばかりに置かれた
紙袋の中には
クリスマスリースや、クラッカーの山


その隙間からジーンズ

――― 膝から下の長い、脚が見えた



『 ……青山さん!!! 』





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