いばら姫



真木が運転席から降り

―― 黒い警棒を伸ばして
ガラスに向かって振り上げる


『 …待って!! 』



止めるより先に
白い蜘蛛の巣が目の前に走った

その一番濃い部分に拳を入れ
躊躇する事無く、空いた隙間に
腕を突っ込み

途端に
かなり変わった香水の香りが
中から一気に流れ出して来て
全員少し咳込みながら、
紙袋をどんどん運転席、助手席
端へと放り投げる



今の所
誰か来る気配は無い

意識を失い
後ろ手に縛られた青山の体を
三人掛かりで引き起こした


―――が

胸の部分が、赤黒く染まっている



『 …ピザソース 』


灰谷が指を舐め、低い声を漏らし、
真木が安堵の表情を浮かべた


「 …出るぞ!! 」





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