いばら姫
「 …嘘じゃない
―― あずるは "水谷を選ぶ "
そう言ったんだ 」
俺は青山の肩口を掴んで
何か別の言葉が出て来ないか
必死に揺すった
「 そんなの…
周囲になんかするとか…そういう
…脅されて言ったに決まってるすけ!!
お前、そんなの真に受けて
にっこり笑って納得して
帰って来たのか?! 」
「… あずるには会って無い 」
「 …な… 会って無いって… 」
「―― 呼び出されて
ライヴハウスでベースを渡した…
水谷が居て… 携帯を渡されたら
あずるの声が聞こえて来て… 」
「 何処のライヴハウスだよ?! 」
「―― 古い…
映画館だったかもしれない 」
「 な… 青山、お前…? 」
――― 何だか目の焦点が合っていない
「…あずるは…居たのかな… 」
ほの暗い目と
力無く発せられたに寒気がして
思い切り、青山の横っ面を張り倒す
「―― 居るだろう!!!」
『…真木さん、岡田さん
やっぱり青山さんおかしい
梅川さんの所に連れて行こう
これ…多分、薬使われてる 』
「 …く、薬?! 」
『…そう
車を開けた時、
変わった匂いがしたでしょ
何年か前に、
ネットや都心で取引されてた
アッパー系の液体合法ドラッグ
糖と化合すると変化して
強烈な幻覚剤になる 』
―― そう言えば
出会い系サイトで呼び出して
カルアとか、
女が好む酒に混ぜて使うとか
一時期問題になって規制が入ったと
ニュースで見た様な気がする
"アホな奴らだな"って――
呆れて西と話していた記憶があった
「 灰谷、岡田
俺は青山連れて、梅川さんの所に行く
水谷は
アズルだけには何もしないって
践んでたけど
…―― ちょっと雲行きが
怪しくなって来たからな
先に、ライヴハウスと映画館
ジョンと相談して探してみてくれ 」