いばら姫
―― 舞台チケットを求める行列
太い糸で編んだマフラーで口元を包み
ミニにレギンス
ライダース一枚で、白い息を吐く少女
旅慣れしていそうな
上質のコートに綺麗な靴を履く老夫婦
様々な講演名が、
赤く表示されて行く電光掲示板を
瞳を輝かせながら、一生懸命に
チェックしている
『―― 岡田さん
街の地下、ジョンさんが
業者に声かけて廻ってくれてたけど
異常無しって事で撤収した
今、車でこっちに向かってる
これから無人の映画館
貸し切りになっていた、
なっているライヴハウスを
虱潰しに探すよ 』
「 東京と違って、まだまだこっちには、
電話ボックスが残ってるんだな」
『 …電話ボックスが無かったら
ケントがスーパーマンに
変身出来ないじゃん』
「――確かに」
そう言って笑う灰谷に釣られて
自分も笑う
路上のホットドックスタンド
印刷も何もされていない
薄いパラフィン紙から
前後をはみだたせて湯気をたてる肉
薄い色のコーヒーを買って
灰谷が一セットづつ、俺に渡してくれた
「 ありがとう 」
『 … こっちこそ
ユカが迷惑かけてゴメン 』
「 いや…
―――― なあ? 」
『 …何? 』
「 …… 夏に
真木はさ…
真木や、あの連中の中ではやっぱり
…俺は女引っ掛けて、悪さする奴らと
扱いは同じだったのかな… 」
『 … RELIEFは
あの世界の中でのフレンドサークル
名前付ける時に、チェックして
集団出会い系っぽいと許可しないし
それが判明したら
アカウント停止されるからね
でも、Seroがやってた
前のゲームなんかだと、
サービス開始からだいぶ経って
世界自体が停滞してたから
冒険に飽きた奴らが
リアルコミュニケーションに走って
そういうギルド、沢山あった
さっきの薬や、
カラオケに呼び出して、
乱暴するとか言う事件も
哀しいけど、…あったし
――― 派手に報道もされたよ
だから皆、凄く心配したんだ 』
「 … そっか… 」