無糖
来たときとは違う
ボールを打ち返す音も
体育館から見える光りも
すべてなくなり
坂道の途中
自動販売機の明かりや
電灯の明かりが
やさしく
あたたかくて
ふたり
「あれは十四、五の」
一青窈の「かざぐるま」
口ずさみ
ひとりで帰れる自信がなかったのです
互いに
泣いてしまいそうで
泣くものかと
変に人前で泣くことを出来なくなった
ふたりで
自転車降りて
歩きながら
暗闇のなか
帰って来たのです
ふたり
足跡を見つめたら
すべてが綺麗なものではなくて
それでも
また
歩くのだと
歩いてゆくのだと
ひとりで感じました
あのころのふたりは
自分の周りに
モザイクをかけて
足場の不安定な
吊り橋を渡っているようで
周りのあたたかな
ふわりとした
何かを知らず
生きて
それでも
いま
やっと
ほんとうに
やっとですが
見えました