あたしだけのお医者さん
暖かいタオルで額の汗を拭いながら、思う。
初めて親父から由香のことを任されたとき。
厄介だとは聞いていたけど、取り分け気にしてはいなかった。
ただの患者と割り切っていた。
あの頃の俺は毎日どこか投げやりに生きていたのかも知れない。
たくさんの人を助けたくて医者になった俺を待ち受けていたのは、毎日色目を使ってくるろくに仕事もしない看護師たちや、
具合が悪くもないのに患者としてやってくる女たち。
もちろんホントに体調が悪い由香みたいな患者も来ていたが。
そんな世界に疲れきっていたのかも知れない。